ひょんなことから手に入ったキーオのコックサドルケープ。
グリズリー・ダイドピンクという使いどころが思いつかないちょっと微妙なカラー。実はこれが欲しかったわけではなく、抱き合わせで出されていた同じくキーオのコックサドル、グリズリー・ダイドオレンジが欲しかったのだ。なのでこのピンクのほうは後で売っ払おうと思って買ったのだけど、実際に手にしてみるとさすがに#1グレードだけあって品質は抜群。ファイバーの艶や密度、ボリュームとも申し分ない。ドライフライも十分に巻けそうなハックルがたっぷり生えている。
キーオのハックルケープは初めて手にしたけど、ストークが細めで個人的にはメッツよりも断然好み。ただサドルといっても1本1本のハックルは短めで、ホワイティングやメッツのように1本のハックルで何本もフライを巻くことはできそうにないけど。
それでも、6千5百円ほどの元々の値札が付いているけど、今だったら1万円は下らないに違いない。今の私にはもはや手の届かない値段だ。ただこの色だとソルトフライとかイントリューダーくらいしか使い道が思い浮かばない。
しかし残念ながら私はソルト用のフライにハックルは使わないし、イントリューダーを巻く予定もない。だからといって色が色だけに、オークションやフリマに出品しても大した値段は付きそうにないし。。。
そこでふと思いついた。自分で染めればいいんじゃないかと。ピンクよりも濃い色になら染め直すことができるんじゃないどろうか。以前からクリーという、グリズリーの白黒に茶色が混じったカラーのハックルが欲しいと思っていたのだった。
何でも、アダムスなんかのグリズリーとブラウンのハックルを2枚巻くパターン、もともとはクリー指定だったのが入手困難なためそんな巻き方になったのだとか。これを茶色に染めれば、うまく行けばピンクの赤味と茶色が混ざり合って赤みがかったいい感じのコーチマンブラウンのクリーになるかも?
といろいろ妄想を巡らせていたのだけど、緊急事態宣言が出て暇になった8月も暑すぎてなかなかやる気が出ないでいたのだった。ところがここのところの連日の雨ですっかり涼しくなり、家での作業もやりやすくなってきた。
ここは一気にやってしまおうと作業に取り掛かることにした。ハックルケープの染色というとかなり昔、気に入らなかったメッツのハックルの色を変えてウェットフライ用に使っていたことがある。
その時はクリームをブルーダンに染めようとしたのだけど、染料は衣料用染料として有名なダイロンを使った。そのときはオリーブがかったグレーに染まって非常に満足度の高い仕上がりとなったのだった。
ただダイロンは熱湯で処理する必要があるため、ハックルの油分が損なわれて、ドライフライ用に使うには適さないのではないかと思えた。そこで今回改めてハックルの染色について調べてみると、皮革用の染料がいいという記事をたくさん見つけることができた。
クラフト染料とかローパスバチックといった商品で、100mlが1本3、4百円程度。常温で染められるらしい。そこでDIY関係の製品も充実しているジョイフル本田というホームセンターに行ってみるとローパスバチックを発見。100mlで税込み376円。
ただ茶色系だけでも黄茶、茶、焦茶、マロン、チョコレートなどいろいろある。とりあえず今回は茶か焦茶の2択で、何ならハックルケープを2つに切って両方試してみるのもありかと思ったけど、元々が白ではなくてピンク、より濃く染めたいところなので今回は焦茶1本で行ってみることにした。
この皮革用染料でのマテリアル染色、単純に常温の原液に漬け込むのが基本のようだけど、イメージ通りの色を出すためには薄める必要はないのか、はたまた何時間くらい漬け込めばいいのか。その辺りはハックルを数本引っこ抜いて、あらかじめテストしておくことも考えた。
ただいざやるとなると面倒になり、一気にやってしまうことに。まあ、イメージ通りにならなかったとしてもピンクよりは使いやすい色になるのではないかと。やり方としては、ハックルケープをジップロックに入れて漬け込むことにした。
ただこのローパスバチック100mlでは、ボリュームのあるハックルケープ丸1枚を染めるのに足りるのかちょっと微妙な感じ。なので今回はあらかじめハックルケープを水に漬けて濡らしておいて、軽く絞ってから大きめのジップロックに投入することに。
そこにローパスバチックを注入してみると、2、30mlくらいを残してひたひたに漬けることができた。そこからさらに空気をできるだけ押し出して真空パックのような感じにする。これを浅漬けの漬物のように軽く揉んで、染料を満遍なく行きわたらせるようにした。
さて、一体これをどのくらい置いておけばいいのだろうか?だいたい一晩というのが相場みたいなので、翌日の午前中か午後早めに次の工程に移れるように22時ごろにこの作業を行ったのだった。
朝起きた時に念のため袋をひっくり返してさらに馴染ませる。そして10時ごろ、まだちょっとピンクっぽいところもあったのでもう少し置いておいて、結局15時間後の13時ごろ取り出してみることにした。
ジップロックの下の角をハサミでちょっと切って染料を絞り出す。そして今度はハックルケープを水洗い。何度水を換えてもじわじわ色が出てくるので、適当なところで切り上げて新聞紙に包んで粗方水分を吸い取った。
それから風通しのいいところで陰干ししたかったところだけど、ここのところずっと雨続きなので室干し。うちはベランダの庇が短くて、雨だと濡れてしまうのだ。そんなわけで気温も低めで丸3日間くらい干してようやく完成。仕上がりとしては、、、
悪くない、、、どころかかなりいいんじゃないでしょうか?ちょっと色むらがあって、裏側とか根本のほうとかほんのりとピンクっぽいところも残っているけど、概ねイメージ通りの赤みがかった茶色になった。艶も損なわれていないし、これならドライフライにもウェットフライにもいろいろ使いどころがありそう。
さらに、使った染料は捨てずに回収して、大量にあるけどこれもあまり使いどころがないレモンウッドダックの代用品、グレーマラードのダイド・ジンジャーを茶色に染めて、もう少し使いどころが多いブラウンマラードのサブにしてしまおう。
これも一晩漬けてみたところ、ハックルケープのピンクが溶け出たのか染料がちょっと紫がかった色になっていたけど、果たしてどんな仕上がりになるだろう?
私はウェットフライのフェザーウィングは小さめのフランクフェザーとかもっと小さいブレストフェザーをまるごと1枚使うのが好きなので、ブラウンマラードのパターンでもグレーマラードを茶色に染めた小さめのフェザーをよく使う。
こちらはバラのフェザーなのでわりと早めに乾いた。こちらは思ったような色ではなかったけど、かなり暗めの色になって結果オーライ。予想よりも本物のブラウンマラードっぽくなった。ただもしこのカラーで爆釣したとしても、二度と再現はできないだろうけど。。。
ということで今回のローパスバチックでの染色、ハックルケープもマラードフェザーもいい感じに仕上がって大成功!ローパスバチックでのマテリアル染色、なかなか面白いかも。何より最終的にどんな色に仕上がるのか乾くまでわからないので、待っているときのワクワクドキドキ感が堪りません!
皮革用染料でのマテリアル染色、時間は掛かるけど簡単だし、狙い通りの色を出せるかは別にすれば大外れはなさそうなのでフェザー系にはおススメです。上記のアマゾンや楽天市場でも手に入るけど、高いので実店舗で買ったほうがよさそう。クラフト染料(クラフト社)の取扱店なら下記から確認できます。
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